この染付の耳付小向付を先代の菁華さんにお願いしてからもう三十五年以上経ったでしょうか。辻留さんの本で使われていたこの耳盃の美しさに魅され、それが逸翁美術館所蔵のものと知り、辻留さんにご紹介いただいて美術館に行き手に取って見せていただきました。
その時お聞きしたことを菁華さんにくどくどと申上げて「やってみましょう」と言っていただいたのでした。ようびを開店して早々の「こわいものしらず」の時代でした。随分恥ずかしいことやヒンシュクを買うこともしていたと思います。でもその頃の懸命な想いをなつかしく思い起こす、明時代染付耳付の小向付です。小さいのに格調高く、食卓に出ていると孤高の人のようです。大好きな一品です。