永年お願いしたく思いつつやっと御縁をいただいて入れていただけることになりました。大変魅力的なもので、ドキドキしながら窯場を見せていただいて来ました。私の年齢でもまだドキドキすることがあるのかと新鮮な驚きです。
御父上は辻村史郎氏、ごくごくお若い頃(ようびも開店した当初)に御縁があって少しの間頂戴していたことがありましたが、今やあこがれの陶芸家となられてご活躍中です。
息子さんの塊さんはとてもとてもナイーヴな方で、何のこだわりもなく土から生まれたばかりのような御自分の表現をなさり、しかも使えるものを作られていて、ようびにとってこんなにうれしい物はないのです。
内部から出てくる形をそのまま表現したその形は何とも美しく、人を刺激したり驚かせたりなぐさめたりと、見る者使う者に多様な感情をもたらしてくれます。
このような作品を皆様に御紹介し、たのしんでいただけるのは、この商いの果報だと感謝しています。
信楽や伊賀のような釉をかけないで高温で焼くものは、一つとして同じものは出来ません。火のありよう(火の当たり方や温度、窯の中の置く場所)によってさまざまに変化するのです。それがまた人間技ではない予測不能の面白さとなります。陶芸家たちはその妙をたのしみますし、私たちも食卓に持ち込み、さまざまな変化をたのしみます。
土をそのまま見せてくれるこの種のやきものは、何か大地の力を与えられるように思われます。是非食卓に導入してください。たっぷり水を沁ませて果物、おさしみ、焼物など、たのしんでみて下さいませ。
お膳に乗せられる時は高台に小さな紙を敷いていただくと傷を防ぐことが出来ます。机に乗せられる時も心して、やんちゃなものですから。
辻村塊さんの作品は、息使いや勢いを感じて魅力的な分、この様にどうかするとカケに見えてしまうこともあります。
上ぶちまでロクロを引き上げて手を放す直前の手跡などです。それをきれいな形に修正するかどうかは造り手の意向によります。それを受け入れるかどうかも買い手、使い手の意志によります。ようびはこの手跡の面白さを重んじています。
砂石まじりのハジケなども同様に、魅力として捉えています。伊賀や信楽の面白さはそんなところにもあるのです。