これからの季節は木も草も枯れ始め、その過程も又美しいものです。季節を食卓に反映するよろこびはまた格別のたのしさがございますね。
辻村塊さんの力強い葉。秋の味覚、小芋の衣揚げ、鶏ささみの酒蒸し枝豆添え、鰊の甘露煮と取り合わせてみました。朱筒椀には豆腐と白味噌など温かなものを。辛口の常温のお酒とよく合うお献立だと思います。お酒はまだ少し夏の名残の片口に。秋本番にとうつろう頃のお食卓です。
朱筒椀は小ぶりに見えておりますが、薄手で、かなり容量は大きくたっぷり入ります。まり椀や他の蓋物と同じようにしっかり出来ておりますので、日々のご使用に充分に耐えるものです。
土瓶蒸しは松茸が宝石並みになったにもかかわらず、やはり毎年ご希望があってお願いします。
今年は土楽さんのものも久しぶりに作っていただきました。これ以上のものはあまり見ません。持ち手がないのも直火にかける時は焼ける心配もなく、注ぎやすく、猪口の大きさも丁度良く、口のしぼられたこの形はこぼれにくいという利点もあり、誠によく出来た器でございます。松茸の土瓶蒸しだけでなく、温かいものが恋しくなる季節にさまざまにお使いいただければよいと思います。
辻村塊さんは父上、兄上と共に陶芸家御一家です。お家芸とも言える朴の葉のお皿に、お寿司とおむすびと焼獅子唐をおつまみに、土瓶蒸し。なんてすてきではございませんか。
お月さまも美しくなる季節です。みなさまにとってよい秋でございますように。