ずい分昔(もう40年位にもなります)辻留さんから欠けてお店で使えなくなった向附を「こんなもの作ってみては」と頂戴しました。(欠けていることは、材料の素性が見え釉(うわぐすり)の濃さまではっきりと解り資料として完品にまさるもの。それを御存知でたびたびこうして頂戴出来たことは本当にありがたいことです)
長い長い間、この雰囲気のものを造っていただける方を探していましたが、この度やっと土山さんならと思いお願いしてみました。さすが同じ京の五条あたりの匂いのする「モノ」を造っていただくことが出来ました。辻留さんに頂戴したのはもちろん本歌で、作者は「お悠さん」と皆が親しみをこめて呼んでいる永楽家十四代得全の妻・妙全さんで、茶道具だけでなくさまざまな食器を造った人です。何でもない様でしっかりした形、確かな技術と品位、この向附も形といい大きさといい使いやすく華やかです。
こまかいところに見所があり、難しさがあり、土山さんには何度も試作をお願いしてこの度出来上がったものです。特に秋から冬にかけてお使いいただくとよいものかと思っています。