まだ日中はお暑い日が続いておりますが、さすがに朝夕は少し秋の気配を感じます。長い間日本人が眺め、親しんできた秋の風景を想いながら設えてみました。
輪島の尚古堂さんの千筋糸目椀に蒔絵は竹田省さんのもの、表側は糸目の上に施されている蒔絵が薄野の雰囲気を出してくれています。内側にはお月様と蝶が画かれていて、さすが京の蒔絵師さんと思わせるものです。
辻村塊さんのたいへんに盛り映えのする長皿は、備前の赤土を黒く焼き締めて作ったもので、渕の上がり方が盛ったものを落ち着かせています。
・茄子のごまよごし
・焼きえび
・子持ち鮎筒切り
・枝豆
・つぶし大徳寺納豆
植山昌昭さんに作っていただいている鳴子形の小鉢(菊唐草紋)には、おくらのおろし和えを盛ってみました。
お膳は奥田志郎さんの布盆ですが、まだ輪島塗りを再開できず品不足は深刻です。
静かでおちついた取り合わせです。
少し横長のお膳を作りましたのは、脇取としては通常のものより長いので、大勢のお客様の時には便利なのと、折敷として洋食皿とナイフ・フォークという置き方も出来、またこのように二種のものをゆったりと置けて仲々に落ち着くと思
ったからでした。
椀は極薄く、表は千筋糸目、京の蒔絵師・竹田省(春峰)さんに儚い風情の芒と内側は秋の蝶と半月の月を画いていただきました。秋に限定して使う贅を味わっていただけるものです。
藤井収さんの六角縁高の中には、錫のつぼつぼと伏原博之さんの菊の葉の猪口に、目刺しのほぐし二杯酢と菊菜のごまあえを盛り込みました。
お箸置きは光琳菊、脇に紫と緑の色絵が入っていて、ちょっと粋です。伏原博之さんの作です。
昔(と申しましても40年ほど前)正木さんに3年位の間、染付のものを集中して作っていただいた時代がありました。この琵琶の向付は、古染付写しとして作っていただいたもので、特に店主の私が気に入っている秀作です。
正木さんは魯山人が須田菁華さんで色絵を作らせていただかれていた頃、ずっと投宿しておられた宿「白銀屋」さんの御次男で、さまざまなよい器を見てお育ちになったこともあって、技術はご夫婦で須田菁華さんに修行に入られ、ようびのために次々とよいものを造っていただきました。残念ながら今年春に奥様は亡くなってしまわれましたが、お弟子さんの力を借りられながら、年ですからとおっしゃりつつ意欲的によいものを造ってただいています。
椀は名代の尚古堂さんの作品に、京・竹田省さんの芒の蒔絵、蓋の裏に蝶、中には月があり、琵琶と相まって秋を感じさせてくれるのではと思います。