豪快にお酒を召し上がる福森さん。炉端でこの大杯を上げられるのかしらと思いつつ、形の美しさを盛り器にしてみました。
剣先烏賊の糸づくりを敷き、うにと生姜をからめて召し上がれ。盃は須田菁華さんの朱盃、中に貴の字が見えます。
焼締徳利も福森さんのもの、大好きな彼にしか出来ない微妙な形をしています。とてもいい形です。口にほつれがありましたので、形を重視して金継をしましたら、余計に美しいものになりました。
八角の黒の盆が全体を締めくくっています。
この刳り物の盆は大変丈夫なものです。 兄 野田行作が芸大を卒業した頃に制作したものの写しです。
七輪の炭火で砂糖を懸命に焦していた姿をはっきりと覚えています。これを乳鉢で丹念に擂り、漆に混ぜて下地を作るのだと云っていました。その下地で作ったのが初代の朱9寸八角盆です。兄は下地、塗り方、装飾と、さまざまな試みをした人で、産地の伝統の中にいる人間ではない、いくつかの独自の技法を生み出しました。その殆んどを、懐石辻留の御主人、先代の辻嘉一氏と当代辻義一氏が受け入れ、理解してお買い上げ頂いて、五十年余りも経つ今も健在で、ますます美しくお使い頂いているのは本当に嬉しくありがたいことです。この盆の朱も本店で今も日々お使い頂いていて、根来のようになっています。
この度、奥田志郎さんに造っていただいたものはお砂糖の下地ではありませんが、輪島の下地を使って作ったものです。この「むっくり」とした形を黒塗りでも作って貰いました。
手盆(運び盆)として、また八寸のようにもお皿のようにもと多用途におたのしみ下さいませ。