昔(と申しましても40年ほど前)正木さんに3年位の間、染付のものを集中して作っていただいた時代がありました。この琵琶の向付は、古染付写しとして作っていただいたもので、特に店主の私が気に入っている秀作です。
正木さんは魯山人が須田菁華さんで色絵を作らせていただかれていた頃、ずっと投宿しておられた宿「白銀屋」さんの御次男で、さまざまなよい器を見てお育ちになったこともあって、技術はご夫婦で須田菁華さんに修行に入られ、ようびのために次々とよいものを造っていただきました。残念ながら今年春に奥様は亡くなってしまわれましたが、お弟子さんの力を借りられながら、年ですからとおっしゃりつつ意欲的によいものを造ってただいています。
椀は名代の尚古堂さんの作品に、京・竹田省さんの芒の蒔絵、蓋の裏に蝶、中には月があり、琵琶と相まって秋を感じさせてくれるのではと思います。
有光武元さんがずい分お若い時に作っていただいたものを思い出し、深向、向付、お皿などお願いしました。これは山桜でしょう、花と葉が一緒に出て、その赤い葉の色が美しいのです。
椀は元は兄・野田行作の作品だったものを奥田達朗さんが写して、志郎さんに引き継がれ、なぜか二つだけ(赤と黒)残っておりました。二つ並べてみると美しいので出させていただきました。
輪島の震災のつめあとはすさまじく、復興はまだまだという状況ですが、何とかお仕事が出来るまでつないでいってさし上げないとと思っているところです。