スタンダード・アゲイン
ミッドセンチュリーが流行していた90年台にバニラはオープンしたわけなんですが、あれから20年、スニーカーブームやSachmosなど90年台にインスパイアされたものが再注目・流行の兆しを見せてます。当時流行したイームズのようにこのスタンダートチェアもまた、再流行の兆しが目の前まで来ているのではないかとビンビン感じたというわけで、敢えての今、このスタンダードチェアの素晴らしさを今という尺度で皆様にご紹介しようと思ったのであります。
マンガとポップス
1934年に、当時大学用の椅子として生まれたスタンダードチェア。
歴史的名作がゆえ、語らずもがなという感じもしますが実は日本ではあまり一般的に普及をしていないプロダクトでもあります。一番の特長は何と言っても後ろから見た時の細い線で描いたような、あたかもマンガ的にも見えるすらっとした脚と天板のコンビネーション、ぐるっと横に回ると座面を圧倒する太い脚のポップさが目に飛び込んできます。前の顔と横の顔、それはもう別の椅子と言っても良いくらいの2面性を持ったふたつのフォルムが一脚を織りなしています。
ブラッド・ピット泣かせ
スタンダードチェアの魅力のもうひとつは、「色」。80年の歳月を経てとても多くのカラーバリエーションが発売されてきました。既に廃盤になっているものも合わせると、組み合わせは数え切れない程あり、コレクター泣かせと言われています。ブラッド・ピット、マーク・ジェイコブスなど著名人にも熱狂的なファンが多いのも頷けます。
様々なシーンに合う普遍性
凛とした後ろ姿。ミーティングや商談の中身もきっと良い内容になる。
同じくプルーヴェデザインのEMテーブルとのダイニング
ジャン・プルーヴェデザインのEMテーブル、同じくvitra社が製造するオールプラスチックチェアと。
こちらもEMテーブルと。座面は全てナチュラルオークでベースは左がジャパニーズレッド、奥側はディープブラック、手前がエクリュの組み合わせ。
スチールレッグの構造美学
スタンダードチェアは、比較的負担の軽い前脚は細いスチールパイプ仕様。
後脚は、より大きい負担を支えるため、大きなパイプで製作されています。幅広に設計された三角形により、人がもたれかかってもうまく力を逃がし、快適に座れるために生まれた必要最小限なフォルムが、快適な座り心地が実現させています。構造上負荷のかかりやすい部分に耐久性と安全性を考慮した設計を施し、この構造美学を示すスチールレッグがプルーヴェを象徴するデザインともいえる。幅広に設計された三角形の後脚とシンプルなスチールの前脚が計算され尽くした構造により、スタイリッシュで無駄のない魅力的なデザインとなっている。
シンプルな構造ながらも、座るとしっかりとサポートされているような感覚のため、負担の掛からない楽な姿勢を保て、長時間座っても疲れないのもこの椅子の特徴です。
ジャン・プルーヴェ
ジャン・プルーヴェは、ル・コルビュジエら同時代を生きた芸術家たちの賞賛を集め、ノーマン・フォスターやレンゾ・ピアノら戦後の芸術家にも影響を与えたデザイナー/建築家。1901年、フランス・パリに生まれたジャン・プルーヴェは、アール・ヌーヴォの一派であるナンシー派を率いたヴィクトール・プルーベを父に持ち、1916年金工職人のエミール・ロベール元での修行を経て1923年に独立、そのキャリアをスタート。
30歳で工房アトリエ・ジャン・プルーヴェを設立、やがて家具デザインから建築デザインまで活躍の場を広げる。
工業化を推し進めたジャン・プルーヴェの工房は、またたく間に300人もの工員を抱える工場へと拡大していきますが、作家はデザインだけでなく生産や施工のプロセスも重視し、常に製造現場に寄り添ったものづくりをしました。
シート&バック バリエーション