『野鳥画家 神戸宇孝さん』にエンデバーED IIの使用感をお聞きしました。
EDアップグレード版”ではない!
初めてエンデバーED II(以下ED II)を手にしたときは、全体が深みあるブラックで引き締めまったと感じ、ボディのラバーも手触りもさらによくなったことで、好印象の連続でした。
しかし、実際にレンズを覗いてみて、外側の変更はED IIの核心部分へのプロローグだと気がつきました。ED IIを使ってみて、これは単なる“これまでのエンデバーEDの改良版”ではなく、
まったく新しい製品を仕上げたといってもいいくらいの変化だと個人的には思います。
レンズ内の光を“均等配分”するような印象
森の中で使ってみたときが最初の驚きでした。今までのエンデバーEDのレンズも十分明るく、目が疲れにくいものでしたが、このED II搭載のレンズは、さらに良くなっています。
このレンズ性能の印象を感覚的に表現するならば、
「レンズ内に入った光を接眼レンズに到着するまでに均等配分させている」
といったところでしょうか。
ここで誤解を受けないようにしたいのですが、光の分散を少なくさせるEDレンズ本来の性能は保たれているということ。
実際に森の中を歩いたことのある方ならばイメージできるかと思いますが、は葉の陰などで意外と明暗差が大きいものです。
レンズを覗いて 、この“明るいところ”と“暗いところ”の差が大きい場合、明るさにひっぱられて暗いところがより暗くなって見えにくくなることがあるのですが、ED II採用のレンズは、“暗いところ”に光を配分して全体的に明るくなっているように見えます。まるで明るいところは明るさを抑え、暗いところは暗くなるのを防いでいるようなのです。
例えば、森の中で背景に明るい部分があるとコントラストが強くなって色の微妙な違いが見えにくいことがありますが、ED IIならばキビタキの胸の黄色が徐々に白くなっていく様子まで見ることができるでしょう。
ほかには、茂みや樹木の葉陰に見え隠れして全身をなかなか見せてくれない鳥がいても、このED IIで追い続けていれば見分けるチャンスが来ることを意味し、
目の疲れを軽減してくれる効果が期待できます。目の疲れが少ないことは、鳥を探して歩く際には石などにつまづいて転倒することを防ぎ、帰り道では運転も注意力の持続につながるでしょう。
バードウォッチングで一番大事なことは「無事に家に帰る」ことですから、安全をさりげなくサポートしてくれる双眼鏡の選択は、実は大事な要素です。
“見やすさ”から、鳥の“らしさ”と“個性”が見えてくる
必要なシャープさを確保しつつも、レンズ内全体の明るさがマイルドで見え味としてはやわらかいため、“見やすさ”がしっかりしているED II。私のように野鳥を描く仕事をしていると、スケッチと観察を両立させる必要がありますが、紙の上で描くこととレンズを覗くという近距離と遠距離を見ることを交互に何度も続ける人間には目の疲れを軽減してくれる光学機器の選択が何よりも重要になります。観察のための基本性能がしっかりしているED IIはたいへん魅力的な双眼鏡です。
また、最近若い世代や女性の方の中には、現れた鳥が飛び去るまでゆっくり観察したいという方が増えてきているのですが、ED IIはそんな観察が好きな人にお勧めしたい機種です。一つ一つの出会いを大切にした観察で、鳥のかわいいしぐさを楽しむサポートをしてくれることでしょう。
さらに、ベテランの方にも身近な野鳥の表情をずっと観察したいという欧米風のバードウォッチングを好む人が出てきています。長い時間見続けても疲れにくい“見やすさ”を兼ね備えたED IIの見え味は、大きな魅力となるでしょう。加えて、野鳥カメラマンにも良き相棒となる機種でしょう。シャッターチャンスの前ぶれを察知するために観察することが苦にならないED IIは、きっとあなたの写真撮影の強い味方になってくれると思います。

鳥の気持ちに寄り添いながら観察をし、その鳥の“らしさ”や“個性”を見つめていきたい方々に、ED IIは最適の双眼鏡だと思います。
良いものは継承
初代EDシリーズで好評の、右目の視度調整リングのロック機能、眼鏡ユーザーに嬉しい3段階の調節機能付アイカップ、防水機能はそのまま継承しています。良いものはきちんと残す製品作りは、ユーザーにはうれしいものです。
外見的には、初代エンデバーEDと大きな変更はないのですが、中身が大幅に進化したED II。これだけアップグレードした機種ですから、“ II”なんてしないで、個人的には新しい名前をつけてあげたいくらいです。
ED IIを持って、鳥たちとの素敵な出会いを楽しんでいただけたら、私も嬉しいです。

神戸宇孝(ごうどうたか)
1973年、石川県生まれ。野鳥画家。 英国サンダーランド大学自然環境画学科卒。 5歳のときに野鳥観察に興味をもち、野鳥画は小学生のときに動物画家の薮内正幸氏の絵を見て描くようになる。C.W.ニコル氏のもとで環境管理について学び、2000年英国に留学、野生生物を描く基礎を学ぶ。在学中、野鳥雑誌BIRDWATCH野鳥画コンペティションにて最優秀画家の一人に日本人として初選出される。 |