美濃加茂に、「みのかも金蝶堂」あり。
美濃太田駅から徒歩5分、全面ガラスに木目が美しい和風でモダンな店構え。1960年の創業以来、近隣の方々に愛される人気の老舗和菓子店です。
みのかも金蝶堂の人気商品といえば「ばたあどらやき」。日本で初めてどら焼きにバターをサンドしたお店、ともいわれているとか。
ほろ苦いカラメルに餡の入った「あんプリン」も、他店では見ない商品かもしれません。
ほかにも、食べられる花・ローゼルを使った「赤華結晶(せっかけっしょう)」(ローゼルの琥珀糖)、葛粉100%のアイスバーのような創作和菓子、などなど。店内には和と洋が織り合う、オリジナルな和菓子が並んでいます。
包装には「温故知新」の文字。「伝統も大切に、新しいことも取り入れて挑戦していく」というみのかも金蝶堂の想いがこめられています。
「どれも、これも、ユニーク……ぜんぶ食べてみたいですね」
魅惑の陳列、今回シェアしたい商品は……
「ありました。『そのまんま蜂屋柿』。名前のとおり、本当にそのまんまです!」
美濃加茂の高級品「堂上蜂屋柿」と「栗きんとん」を一挙に味わう
見た目は蜂屋柿そのままですが、少しふっくら。なんと、中には岐阜の名物「栗きんとん」が詰まっているんです。
高級干し柿「堂上蜂屋柿(どうじょうはちやがき)」って?
美濃加茂で千年以上も続く伝統製法でつくられた「堂上蜂屋柿」。美濃加茂市蜂屋町でのみ作られています。蜂蜜のように甘いことから「蜂屋」の地名がうまれ、朝廷や幕府に献上されて「堂上」の名前に。歴史ある格式高い干柿です。
堂上蜂屋柿は、本当に甘い。もっちりとして、半生菓子のよう。プレミアがつくと1つ3000円以上(!)もするとか。希少で高級なため、贈答品として重宝されています。
岐阜の名産「栗きんとん」って?
「栗きんとん」といえば、岐阜を代表する秋の人気スイーツ。黄金色で粘り気のある栗きんとんではなく、一口頬張るとほっくり崩れる、栗本来の素朴な美味しさ。シーズンにはお店で行列ができることも!
みのかも金蝶堂では地元の素材・美濃栗を使用。ひとつひとつ、手作業で丁寧に仕上げています。
――そんな高級干し柿「堂上蜂屋柿」に、手間暇かかった「栗きんとん」を詰めこむなんて、なんという贅沢でしょうか。
「そのまんま蜂屋柿」を生んだみのかも金蝶堂の想い、株式会社みのかも金蝶堂の専務取締役・長尾竜之介さんにお話をうかがいます。
「美濃加茂の和菓子店」という誇り
創業した祖父の跡を継ぎ、和菓子を探求しつづける2代目の父を、ずっと見てきた竜之介さん。
「父は倒れた祖父を支えるため、修行を4〜5年で切り上げて22歳から店に立ったと聞いています」
現代でも数年の修行が当たり前なんですね。
「自分も住み込みで、安城市で6年修行させていただきました」と竜之介さん。
最初は「そこにいればつくれるようになる」と、どこか軽い気持ちもあったそうですが、修行が終わる6年目、やっと親方から「やる気になったな」と。
「本当にそのとおりでした。そこが、やっとスタートラインだったんです」
美濃加茂と安城と。扱う素材やつくる環境も違えば、地域のお客さまが和菓子に求めるものも違います。
「修行したお店の生菓子に自信があって、自分の店でそのまま並べてみたんです。でも、美濃加茂では売れませんでした。土地ごとの文化や歴史も、和菓子に必要なエッセンスだと気づかされました」
季節や時代によっても、少しずつレシピにも変化があるそうです。
「例えばあんこ。秋と夏で炊く時間が違う。そういった細やかな変化や時代ごとの味覚、いつも同じままとはいかないんです」
新しいものも取り入れて変化していく。みのかも金蝶堂のモットー「温故知新」が脳裏をよぎります。
「そのまんま蜂屋柿」も、地域の素材を取り入れる中でうまれたそうです。職人の試作品を「美味しい!」と一目ぼれした2代目が、さらにレシピを改良。
双方の味がなじむように、間を白あんの羊羹でコーティングするなど、細かい美味しさの工夫が。
「父も新しい和菓子を次々に開発しました。自分も、どんどん挑戦したらいいと言われています。美濃加茂の和菓子店として、真心こめた和菓子づくりで地域に貢献していきたいですね」
将来はパン屋など地域のお店とコラボしたい、と、3代目を継ぐ予定の竜之介さん。
「自分の手でつくる」にこだわる2代目の父とともに、2人の温故知新はどう融合されていくのでしょう。
今後にワクワクしながら、美濃加茂をまるごと味わいましょうか。
レポート:橋本 佳奈 フォト:小池 輝、丹下 恵実 編集協力:谷 亜由子
(2021年3月1日掲載)