■フォントディ■
イタリアの二大ワイン産地、ピエモンテとトスカーナ。前者の代表的なワインをバローロ、バルバレスコとすれば、後者はブルネッロ・ディ・モンタルチーノとキャンティ。キャンティはつい最近までほとんど輸出市場に出回らなかったイタリア・ワインの中で、唯一、世界中に知られているものでした。キャンティと聞くと、藁に包まれたフラスコ形の瓶を思い浮かべるでしょう。今から20年ぐらい前までは、日本やアメリカでもスパゲッティやピザを食べるとき、このキャンティがつきものでした。しかし、それは、雑多なブドウ品種をいくつもブレンドし、白ワインさえ加えてつくられた、非常に質の悪いワインでした。
イタリアのワインの品質管理に関する法律ではキャンティは最高級のDOCGワインですが、かつてはその製法として、何種類ものブドウをブレンドすること、白ワインを一定量加えることが義務づけられていました。世界中に、大量に、安価に供給する必要があったからでしょう。また、トスカーナの主要品種であるサンジョヴェーゼだけでは、良いワインはつくれないとの固定観念もあったようです。これに反旗をひるがえしたのが、1968年に設立されたフォントディです。ルネサンス期以来の瓦職人の家系に生まれ育ったマネッティ兄弟は、サンジョヴェーゼ100%でもおいしいキャンティがつくれるはずだと考え、実際、その通りのものを生み出しました。しかし、これを公表すれば法律違反となり、キャンティとして認められないため、しばらくは製法を内密にしていました。やがて、彼らに追随する者が現れ、サンジョヴェーゼ100%のワインが公然と出回るようになりました。そして1996年法律が改正され、サンジョヴェーゼ100%のワインもキャンティと認められるようになったのです。ワイン・スペクテイター1999年11月号で、ジョヴァンニ・マネッティは「フォントディのつくるワインがイタリア最良のワインであることは明白だ。私はサンジョヴェーゼを信じている。カベルネやメルロは世界中どこでだってつくれる。でもサンジョヴェーゼは特別なんだ。それはトスカーナのためだけのものだから。」 と語っています。サンジョヴェーゼの真髄を感じさせるワインをお楽しみ下さい。
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