4本の弓、16本の弦が豊潤な通奏低音とくりひろげる、「ヴィヴァルディ前夜」のガット芸術
バロックのヴァイオリン音楽がイタリアで大きな発展をとげた17世紀。その頂点としてローマのコレッリ(1653-1713)がとくに有名ですが、実は重要な弦楽芸術の拠点は他にもいくつかありました。南のナポリ、北のモデナやボローニャ……そして18世紀にはヴィヴァルディを排出したヴェネツィアも、17世紀を通じてヴァイオリン音楽の発展には大きく寄与した都市だったのです。
老舗古楽レーベルRicercarで初期ヴァイオリン音楽の知られざる世界を解き明かしてきたクレマチスの面々は、モンテヴェルディやカヴァッリらオペラの大家たちを横目に、かの水の都でどれほど豊かなヴァイオリン音楽が紡がれていたか、何挺もの楽器が響きを交わしあう独特の作品を丁寧に選びながら瑞々しく伝えてくれます。
なにしろタイトルは「四つのヴァイオリン」。一見かなり珍しい編成のようですが、実は世紀初頭のガブリエーリによる副合唱形式の応用(トリオ・ソナタ編成×2部)をはじめ、ヴィオラを用いず4挺が対等に音を交わしあう曲が意外に多い17世紀。初期バロックの中軸を担うマリーニやカステッロ、ウッチェリーニといった定番の異才たちによる思わぬ編成の曲のあいだ、カヴァッリやロッシら声楽の天才たちの作品も盛り込まれ、歌をめざしたヴァイオリン音楽の至芸にも心そそられること間違いなし。
鍵盤のヨアン・ムーランやブリス・サイーら、Ricercarでソロ録音もリリースしてきた俊才が居並ぶ、頼もしい演奏陣での録音です。
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