1925年、電気式録音によるSPレコードが発売されたとき、クライスラーはまだ活動の絶頂期にありました。この第10巻には1928年から1929年にかけての一連の録音を収録、当時最新鋭の技術で、50代前半のクライスラーの美しい音色が存分に捉えられています。
1928年3月、カーネギーホールでのコンサートを行い、その後はヨーロッパ・ツアーを行い好評を博すなど、この時期のクライスラーはトップクラスの地位を保っていましたが、実は、1925年にアメリカの市民権を得たヤッシャ・ハイフェッツらの台頭や、1929年の妻ハリエットの病、兄フューゴの逝去、ウォール街大暴落などにより、彼の生活はストレスに晒されていたようです。しかし、そんな中での一連の録音は、彼ならではの絶大な求心力を持っています。
未発表テイクの貴重な音源を含む魅力的な1枚です。
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