〜つぶつぶセラピーの効果の秘密〜
岡山大学大学院教授 深井喜代子
このつぶつぶセラピーが鎮痛効果をもたらす秘密は、皮膚密着面にビッシリと敷き詰められた小さな「つぶつぶ」にあります。その生理学的機序は、皮膚に微小な電流を流して痛みを緩和する「電気治療」の原理と基本的には同じと
考えられます。
皮膚上には種々の感覚点、すなわち触覚や圧迫を感じる触圧点、温かさを感 じる温点、涼しさを感じる冷点、そして痛みを感じる痛点などが密に点在しています。直径0.2mm程度の極小さな点なので、個々の点は意識されません。
身体の一部に痛みを感じているとき、痛む部位からの信号が痛覚神経を経由して脳に伝わり、「痛い」と感じます。このとき、皮膚の触圧点を刺激すると(弱い電気や軽いマッサージなどで)、大脳皮質の手前にある視床というところで痛覚信号と触圧覚信号が混在する結果、大脳へ到達する痛覚信号が不鮮明になる(ノイズ効果)現象が起こることが知られています(上行性疼痛抑制系)。ただし、触覚は非常に順応しやすいので、この機序を効率よく作動させるにはマッサージは単調にならないよう、リズムや強さを絶えず変えながら行う必要があります。
もし身長5mmの小人が痛みのある皮膚に5mm間隔で隙間なく並び、0.5mmの手で時々休んだりお隣とおしゃべりをしながらもせっせと皮膚を圧迫し続けたら、途切れなく送られてくる触圧信号のノイズとなって痛みが弱まったように感じられるでしょう。
つぶつぶセラピーを痛む部分に装着して日常の動作をしていれば、自身の不規則な筋収縮でビーズから絶えず触圧覚のon−off刺激を受けていることになるわけです。
このつぶつぶセラピーは鎮痛剤の効かない疼痛患者さんの疼痛緩和に役立つことが期待されます。
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