Anne Gros
アンヌ・グロ
2001/07/14 記
ちょっと思慮の足りないおバカな行動をする人に「このおおたわけもの!」となじってしまうことはありませんか?
実はこの「たわけ」の語源は「田分け」からきており、「昔、少々思慮の足りない農民が、自分の子供たちに平等に田んぼを分け与えたことにより、元々小さな田んぼがますます小さくなってしまい、誰も食べてゆけなくなりました」という古事から出来た言葉だそうです。
この話に習うと、このクロ・ヴージョという畑は、本来は50haもあるブルゴーニュで最大の畑だったものが、均等相続の結果、なんと70人もの所有者に細分化され、みごとなモザイク模様となった「フランス一のおおたわけもの」の集まった畑とういことになりますし、このアンヌ・グロを含むグロ一族と言うのは、その相続関係のややこしさから、このような話のとき必ずテキストとして取り上げられる「おおたわけ」の一族であります。
クロ・ヴージョの畑の土地台帳を眺めてみますと、みごとに細分化された畑の様子がよくわかります。しかも均等が徹底されており、皆斜面に対し平行方向に分割されています。つまり斜面の上部から下部に向けて、短いきしめんを並べたような形になっており、これではいくら地図をながめても、だれの所有の部分が良い畑なのか、サッパリ見当がつきません。「クロ・ヴージョは飲んでみないと解らない」と言われる所演です。
しかしながら、この細分化は決して悪いことばかりでもありません。何しろ生産者が増えるので、「隣のやつにまけてたまるかい」とばかりに競争による品質向上があります。しかし一番問題なのは分割により畑の面積が小さくなり少しのワインしか生産できなくなること、つまり少量のワインで生計を成り立たなさねばならぬことです。量が望めぬのであれば、高額で取引されるワインを生産するしか道はないことです。このことが、日本の米農家と決定的に違うことであり、ワインの産業が他のどの産業とも違うやりがいを持っている点です。情熱がそれに見合った報酬を産むのです。
これは、国土が広く人口も多いオーストラリアが大規模な葡萄園を抱え、大衆的なワインを大規模に生産することにより、産業として成り立っていることと、お隣のニュージーランドが国土が狭く、人よりワインを飲まぬヒツジの方が多いお国柄ゆえ、高級ワインを生産する、ブティツクワイナリーが発展していることをみても解ります。このことはワイン産業が、規模を追及する近代産業になじまないことをも語っています。
アンヌ・グロは名前からも解る通り女性で、しかもシングルマザー。ワインの世界に成功した未亡人は多いのですが、シングルマザーはまだまだ少数です。夫からの収入はもちろんありません。アンヌ・グロのワインには女性としての細やかさと、母としてのバイタリティと、醸造家としての情熱が詰まっており、現在グロファミリーのなかでは最も人気があり、かつ高価で取引されています。
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