ひとりぼっちの家出少年と一匹の犬
戦後間もない日本にあった感動の実話
NHK連続ドラマ化! 民放で話題沸騰!
海外メディア(CNN、BBC)も取材に来た
「洞窟オジさん」の少年時代物語
「シロ、ここがぼくたちの家だ。"隠れ家"かな」
世の中から隔絶した山の中で、毎日が狩猟と空腹とのたたかい。
それでも少年と犬は “心を通わせながら"生き続けた。
祓川 学 作 ねもと きょうこ 画 2021.07.04 発行
ISBN 978-4-8024-0124-1 C8093 A5上製 160ページ
内容紹介 ――
主人公・加村一馬さんと出会ってから一八年の歳月が経ちます。加村さんの存在を知ったのは、二〇〇三年(平成一五年)に報道された通信社のニュース記事で、《中学生のころに家を飛び出し、栃木県の足尾銅山の洞穴で生活。山では山菜やヘビ、ネズミを食べたりしていた》というものでした。
この衝撃の事実を知り、すぐに思い浮かべたのは、私が子どもの頃に読んだイギリスの小説『ロビンソン・クルーソー』の主人公が無人島で独力で生活する物語でした。まさに加村さんは『日本のロンビンソン・クルーソー』ではないだろうか……。
私もうれしかったのは、社会復帰した加村さんが夢を抱いていた『子どもサバイバル教室』が群馬県のキャンプ場で実現したことでした。
「うわっ、こんなに飛ぶの? すごい!」
「“洞窟オジサン”って、マジすげえ…」
参加した子どもたちの大人気は弓矢と水鉄砲です。加村さんがナタを使い、一本の青竹から弓矢を手作りで仕上げます。弓矢から放たれた矢が三〇メートルの放物線を描き飛んでいくので子どもたちはどよめき、目を輝かせていたものです。
加村さんを取材してきた私が怖い思いをした経験談をひとつお話ししましょう。子どもだった加村さんが山の中で過ごした気持ちを知りたく、加村さんに数日間、福島県の山中で一緒に過ごすことをお願いしました。
縦横と奥の深さが一メートルほどの洞穴を掘ると、深夜に野生動物からおそわれる危険があるため、火熾こしをしなければなりません。十時間ぐらい燃やす分量のまき拾い集めをしますが、見つからなくて私はあせるばかりでした。(いつもこんな大変な思いをしてきたのか……)
加村さんが火を熾こしてくれると、オレンジ色の炎の明かりがポッと見えた瞬間、思わず、ホッとしましたが、加村さんの表情から笑顔が消えていました。
「これから朝まで火が消えないよう起きているんだぞ。木を絶やすな!」
(えっ? 朝まで……)
「獣は火を怖がる習性がある。自分の命を守るために火を燃やし続けるんだ」
(夜は、眠る時間もないんだ……)
「子どもの頃、こんな恐ろしい毎日を過ごして怖くて逃げたくなかったですか」
加村さんにたずねると、
「シロがいたから怖くもなかったし、さびしくもなかったんだよね」
加村さんが燃える炎をじっと見つめながらシロのことを話すのを聞いていると、加村さんにとってシロの存在はどれほど心強かったことか。私も犬を飼っていますのでちょっぴりわかったような同じ気持ちになりました。
目次 ――
はじめに
お墓でひとりぼっち
シロがやってきた
家出
ひとり、足尾銅山を目ざす
サバイバル生活がはじまった
食べ物を探せ
シロがウサギを捕まえてきた
イノシシとのたたかい
命を救ってくれたシロ
さようなら、シロ
たったひとりのたたかい
ぼくの帰る場所
あとがき