《フリーマン》 ピノ・ノワール “ロシアン・リヴァー・ヴァレー”

【造り手レビュー】グラスに注ぐと、若々しく輝きのある濃いアメリカンチェリーの色味があり、ルバーブ、アメリカンチェリー、野生のキノコ類、雨に濡れた大地などの魅惑的な香りに溢れる。口中ではベリーの風味としっかりとした酸が長い余韻をまろやかにまとめ上げる。果実のたっぷりとした風味と微かに感じる還元的な香りも将来性を感じさせ、2030年頃までの更なる熟成も楽しみ。ロシアン・リヴァー・ヴァレーのピノ・ノワールにあるべき姿そのもの。

【銘柄概要】フリーマンのピノは以下の三種に大別される。
1) 世界最高峰の産地と誉れ高いTrue Sonoma Coastに位置するシングル・ヴィンヤード2種
2) 複数畑の果実から成るポジティブセレクションのアキコズ・キュヴェ（造り手の看板銘柄）
3) 2つのエステイト・ヴィンヤード産を主体にアペラシオンの美質を追求するAVAワイン（値頃感も魅力×2種）

こちらのロシアン・リヴァー・ヴァレー(RRV)銘柄とは上の(3)に当たるキュヴェ。
グロリア・エステイトを主体に、RRVの代表的な畑が加わる年もあるがまさにそんなヴィンテージ。
「値頃感も魅力」と述べた一方のAVAワインだが、これだけの内容ならばその感もなお増すのでは？
見事な構成であり、果実の出どころは以下3つのヴィンヤードに限られる。(他は使用せず)

【57%】グロリア・エステイト：(後記参照)
【31%】プラット・ヴィンヤード：リヴァーズマリーでガローニ初の100点ピノノワールを実現させた特別な畑
【12%】キーファー・ランチ(改名後はKR Ranch)：ピノの上級生産者達が誇らしげに畑名を冠すRRV屈指の名門

▼グロリア・エステイト・ヴィンヤード概要

広く知られる二つの原産地呼称(AVA)、ロシアン・リヴァー・ヴァレーとソノマ・コーストには、かねてより境界の解釈があいまいと指摘を受け続ける箇所がある。そのような場所で、ある生産者は自らのワインに「ロシアン・リヴァー・ヴァレー」を冠し、同じ畑だというのに別の生産者は「ソノマ・コースト」と称してみたり。
有名なリッチー・ヴィンヤードなどは最たる例で、レイミーの単一畑銘柄では「ロシアン・リヴァー・ヴァレーAVA」、同じ単一畑でもオーベールでは原産地呼称を「ソノマ・コーストAVA」とする。
重複するエリアだけにワイン法に抵触するわけでもなく、結局は造り手の裁量に委ねられるわけだが、それだけに“True Sonoma Coast”こと「真のソノマ・コースト」の概念が深くものを言う。
いわゆる“True Sonoma Coast”とは、必ずしもワイン法的に線引きされたソノマ・コーストの内側を指す呼称では無く、俗にいうテロワールが同様ならば、明らかにロシアン・リヴァー・ヴァレーAVAと見られる場合でも、“True Sonoma Coast”と称される例もあり、そこに包括されるグリーンヴァレーであればなおのこと。（現地を訪れても何故ここがソノマコースト？と思わせる時もあるが、線が引かれているわけでは無いのでそれもそのはず）

機運の高まりを見せ始めた2006年頃を境に、True Sonoma Coastの三大エリアと言われた先が、今でいうフリーストーン＝オクシデンタル地区。その中でも代表的な畑が集まる最たるスポットが、グリーンヴァレーAVAとの境界近くであり、上記でいう「歴代初のガローニ100点ピノを生んだリヴァーズ・マリーのプラットや、キスラーがピノのTOPキュヴェエリザベスに採用」とはまさにこの辺りの畑。当該境界線を挟む西側にフリーマンが所有する畑がユーキ・エステイト、東側にはグロリア・エステイトという鏡写しのような位置関係にある。

グロリア・エステイトはワイナリーに隣接するホームヴィンヤード。
急峻な丘陵地にあるがゆえ、畝には均一に陽が当たり、水はけに長ける土壌が樹勢を弱く自然に収量を落とし、小粒に凝縮された葡萄を実らせる。また、表土にはファインピノに有益な砂質土壌、当地に特徴的なゴールドリッジが広がり、16km程先にある太平洋からの冷風がさらに好ましい作用を与える。
酒質を絶対的に左右するクローンは、DRC起源と言われる二種、スワンとカレラに、ヴォーヌロマネの特級畑に顕著とされるディジョン#115、古くから伝わるポマール。畑名は林檎園であった頃の所有者の名に由来。

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