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「お知らせ」とは
● ワインライターの第一人者、立花峰夫とカリフォルニアワインあとりえがジョイント! 第1弾は開始記念、フラワーズのOFFセール♪
名前が知れているわりに意外と飲まれていないフラワーズのAVAシリーズのシャルドネ&ピノは、ソノマ・コーストがもつ可能性の中心を一矢で射貫いた、「ザ・黙ってカートに入れましょう」アイテムです。昔のイメージがあるヒト、はっきりいって今のフラワーズは10年前とは別モンです。進撃の巨人です。キラークイーンです。だまされたと思って、だまされてください。 あ、ちがう、ええとなんだ、買ってください。 ■ 「みなさんコンチハ! インチキ系ワインライター&翻訳者の立花峰夫です。」 このページは、カリフォルニアを中心としたアメリカワインをこよなく愛するワタクシめが、偏愛する銘柄をドラマチックに、ドラスチックに、そしてドメスチックにご紹介するコーナーです。ワインの売上が悪いと即打ち切りという、少年ジャンプの新人作家の新連載みたいな企画なので、関係各位の皆様、どうか義理でお慈悲をください。 ポチっとね。お願いします。
とはいえ、ゼロ忖度でやります。はっきりいってワタシは業界のはぐれモノで、金魚ぐらいしかトモダチがいないのだ。だから、何を書いたっていいのだ。嫌われて困る相手が、そもそもいないんだから。訴訟になっても払う金なんかないぞ。素寒貧大王のオレ様から取れるなら取ってみろってもんだ。 ハアハア……失礼しました。ついクセで、ウチの金魚に話しかけているのと同じ調子になってしまいました。 さてフラワーズです。ワタシはね、プチ博士です、このワイナリーの。2020年2月末、雑誌の取材で訪問しました。で、醸造責任者のシャンタル・フォーサン -Chantal Forthun- にがっつり2時間インタヴューしました。録音を文字に起こしたメモは、A4用紙にちっこい字で14ページにもなりました。だから、このワイナリーの今については、むちゃ詳しいです。 ■ 劇的な変化にびっくらぽん 前に訪問したのは16年前の2004年で、そのときも雑誌の取材でした。1991年に、伝説の畑キャンプ・ミーティング・リッジ -Camp Meeting Ridge (CMR)-にぶどうを植えた、創業オーナーのフラワーズ夫妻(ウォルトとジョアン -Walt & Joan Flowers-)が案内してくれました。 フォートロス・シーヴューAVA内の山中にある自社畑までの道のりは、ソノマの人里的エリアからクルマでたっぷり2時間。ブルゴーニュの超大物ヴィニュロンが「寒すぎ」と評した、「うそーん」と驚く強烈な畑の立地と、息を呑む景観の美しさにはオシッコがちょっと出ましたが、ワインのお味は「ふーん」てなもんでした、正直なところ。だって、なんかドンクサイ感じだなあって思ったんですもの。あくまで個人の感想ですがね。だから、それからはわざわざ飲んでませんでした、ワタシ。 ところがですな、ゼンゼン違ってたんですよ。今回の取材訪問で試飲したワインの数々は。端的に言って「カッコいい〜」。激ウマいなんて、わざわざ言わなくてもいいぐらいのカッコよさ。 どれぐらい前と違うかというと、ジャクソン・ファイブだった頃のマイコーと、ビート・イットの頃の彼ぐらいの差です。 死ぬ前ではありません。あれはやりすぎ。 創業オーナーのウォルト&ジョアン・フラワーズ夫妻(2004年撮影) 伝説の畑、キャンプ・ミーティング・リッジは1991年植樹。シャルドネが主。 1998年植樹のシー・ヴュー・リッジはピノ・ノワールが主。太平洋とサンフランシスコ湾が両方見える。 ■ オーナー交替と敏腕ワインメーカーの着任 とはいえ、整形手術みたいなズルをぶっこいて、カッコよくなったわけではありませんよ。 まず、オーナーが変わりました。 フラワーズ夫妻は引退モードになって、2008年にワイナリーを売ったのですね。買ったのが、知る人ぞ知るチリ人の大立者、アグスティン・ヒューネウス -Agustin Huneeus-。チリ最大のワイナリー、コンチャ・イ・トロの育ての親で、ナパにあるカベルネ・ブレンドの雄、クインテッサの創設者・所有者としても有名な人物です。そこから、栽培をビオディナミの手法も一部用いたオーガニックに転換しました(認証は得ていません)。ヒューネウスは、クインテッサでもゴリゴリのビオディナミをやっているので、フラワーズが同じ方向に進んだのは自然な流れですね。 加えて、2012年にフラワーズにやってきた、現醸造責任者のシャンタル・フォーサンの力がとても大きい。シャンタルは、カリフォルニアの奇人醸造家ナンバーワン、ボニー・ドゥーンのランドール・グラムと、ニュージーランドのカルト系ピノ生産者の筆頭、クオーツ・リーフのルディ・バウアーのもとで、ゴリ系ビオディナミのぶどう栽培やワイン造りを学びます。 そのあと、サンタ・クルーズ・マウンテンズにある、これまた無理・無茶・無駄の三拍子揃った突き抜け系ピノ生産者、リースですこし働いたあと、フラワーズにいよいよやってきます。 最初は一秋かぎりの遊びのつもりが、「ねえ、シャンタル、ずっとここにいない?……いかないで!」、「……アタシも、同じこと考えてた…」という、激しく燃える恋の炎は誰にも消せないの♪状態になり、いきなりヘッド・ワインメーカーに抜擢、今に至るです。 「もうどこにも行かないわ」と、取材時には話していたシャンタル、ほんとにずっと去らないでほしいなあ。とはいえ、そんなふうに言ってても、アメリカ人はあっさり転職するときゃするので、わかりませんけどねえ。
■ ワインのスタイルと原料ブドウ シャンタルのワイン造りは、実にキレキレです。スタイルとしては、IPOB/ニュー・カリフォルニアの流れに沿ったものなのですが、シャルドネもピノもアルコールは控えめ、酸がキリっ、電気ショックがビリビリ系の強烈なテンションとミネラル感がとにかく印象的で、細身なんですが出るところはしっかり出ていて、余韻がうっとりするほど美しいのであります。 これは、今回ご紹介するAVAソノマ・コーストのワインも、アゴ外れ的仰天の自社所有畑キャンプ・ミーティング・リッジ、シー・ヴュー・リッジ -Sea View Ridge (SVR)-の畑名入りピノ&シャルドネも同じです。 CMRといえば、1990年代末までこの畑のブドウをフラワーズ夫妻から買っていた、スティーヴ・キスラーのシャルドネ&ピノで有名になった畑ですが、キスラー時代のCMRがいかにも90’sの豊満系峰不二子だったのに対し、今のフラワーズのCMRは、モードな雰囲気のスーパーモデルっぽい体形ですかねえ。九頭身な感じ。でも、妙な色気があって、脱いだらスゴイんです的な。 さて、ソノマ・コーストAVAのシャルドネ&ピノは、このAVAにある5箇所のぶどうを巧みにブレンドしたものです。フォートロス・シーヴューにあるふたつの自社畑に加え、セバストポール・ヒルズ、グリーン・ヴァレー、ペタルマ・ギャップの各地区にある、20年来の長いお付合いの契約農家の畑から果実はやってきます(以下写真の地図参照)。ぜんぶ冷涼な地区ではあるものの、標高やら、海風や霧の影響やら、土壌やらが違うので、それぞれキャラが立っています。この5箇所の果実を使うシャンタルは、あたかもオーケストラを指揮するように、いろんな楽器の調べから、妙なるハーモニーとメロディを奏でるのですね。CMR、SVRのワインが、ピアノなりヴァイオリンなりのソロ演奏な感じなのと対照的です。 ソノマ・コーストAVAのワインに用いられる畑の位置(画像はカリフォルニアワイン協会のウェビナーより) 【ワイン造りについて少々】ソノマ・コーストAVAのシャルドネは全房圧搾のあと、80%は樽発酵・樽熟成ですが、20%はあえてステンレスでやります。澱とともにワインが過ごす樽は、ブルゴーニュ樽のロールスロイス、フランソワ・フレール社製がほとんど。バトナージュはしません。還元香をわざとつけることもなく、樽風味はおだやかで、生地の良さが光るシャルドネです。いっぽう、ピノ・ノワールのほうは、基本的には除梗しますが粒は破砕せず、ゆっくりと低温マセラシオンをしてからステンレスタンクで発酵開始。エレガントなのに華やかというスタイルを醸し出すための抽出のノウハウはいろいろなのですが、あまりにオタクな話になってもいけないので、ここでは深くは立ち入りません。シャルドネ、ピノともに樽熟成期間は10-11か月程度で、新樽比率は20%ぐらいです。