私は西洋料理の料理人を20年以上していました。
某有名ホテルでシェフをしておりましたが、その私がなぜ自家焙煎のコーヒー屋を営むようになったのか?
きっかけは働いていたホテルで飲むコーヒーでした。
ホテルのレストランでお盆や正月に使用するコーヒーは、メーカーから大量に仕入れたものです。
そのコーヒーを何杯か飲むと気分が悪くなったり、胸焼けがしたり、胃酸が逆流する感じがしたのです。
ちょうどその時、ドイツ帰りの医師から興味深い話を聞きました。
ドイツでは、手術、特に胃腸を開腹手術した人が点滴を外して一番最初に口にするものはコーヒーだと
いうことでした。
日本では体に優しいということで重湯を飲むのが一般的です。
当時の私にとってコーヒーは"刺激物"ですから、手術後にコーヒーを飲むというのはとても衝撃的な話でした。
確かに日本ではよく「コーヒーを飲むと眠れなくなる」といいます。
でも欧米では、「眠くなるから会議の前にコーヒーは控える」といいます。
何が違うんだろう?
ここから私はコーヒーの世界にどっぷりと浸かるようになりました。
ドイツではコーヒーは"体に良いもの"とされています。
調べてみると、日本のコーヒー業界とは全く違いました。
「豆の質」「豆の鮮度」「ピッキング方法」「煎り方」「保存方法」「淹れ方」までありとあらゆる点が違いました。
ドイツのような正しいコーヒー良いコーヒーを提供したいと決意し、コーヒーの生涯の師「バッハコーヒー」の
田口護氏に弟子入りしたのが1980年のことです。
田口先生に最初に言われた言葉「たとえ100人の人が違うといっても正しいと思うことは1人でも言い、行う人になれ」
は日本のコーヒー業界を変えたいと願う私の心に深く突き刺さりました。
屋号のケストナーはドイツの児童文学作家エーリッヒ・ケストナーから付けました。
ケストナーの言葉「この世に善はない、人がそれをなすまでは」この言葉が私を動かします。
正しい良いコーヒーを作り、提供し続けることが私の使命と思っております。
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