漆の抗菌・抗ウイルス効果に関して
漆は本来の性能として、防腐・防虫効果があり、古くから木材に漆を使用されてきました。
令和3年度に「漆」を起点とした伝統的工芸品のさらなる振興のため、経済産業省と(一財)伝統的工芸品産業振興協会、漆関係業界団体の代表者、有識者などで構成される、「うるし振興研究会」が設置されました。
この研究会で取り組んできた、漆の抗菌性などについての検証結果がこのたび発表されました。
食中毒に起因する4種類の菌での抗菌性を検証した結果、非常に有効であることが改めて分かりました。
更には、抗ウイルス(SARS-CoV-2)性についても、24時間後には約99.7%が不活性化(死滅)することが分かりました。
日本では冷蔵庫のなかった時代から漆塗りの重箱や弁当箱を使用していた事は実は科学的にもとても理にかなっていたようです。
現在では多くの抗菌・抗ウイルスの素材が存在しますが、天然の素材では漆は数ない塗料です。
古くから私たちの生活に身近な漆器は安心して使用できる製品です。
※漆を塗った物がどの期間までその効能を持続するか、時間経過と効能の変化に関しては今後も検証していきます。
漆器は日本を代表とする伝統工芸
日本では縄文時代には漆を使用した痕跡があり、古くから漆を身近に使用していました。
漆には抗菌、防腐、撥水、固形化などの性能があり、木材を身近に使っていた日本にはとても相性が良く、生活品を木材で使用する中でも欠かせない存在でした。
そして、その技術の発達と共に、絢爛豪華な蒔絵や螺鈿など美術品としても発展し、海外にも輸出され、世界的にも日本を代表とする伝統文化の代表にもなっています。
現在でも工芸作家の美術品から、漆器の技術を元に樹脂製品や食器洗浄機でも使用できる化学塗料など、幅広い素材、製法で製作されています。
漆と木
日本は山が多く、古来より木は一番身近に取れる素材の一つでした。
特に漆と出会う事で木の文化が発達した要因の一つだと言っても過言ではないかと思います。
湿度の高い日本では木材も腐ったりし易い中、その湿度が漆の硬化を高めます。
そして、漆の防腐、硬化によって、木材に漆を染み込ませるだけで、建築材からお椀まで、永く丈夫に使用できるようになります。
拭き漆のお椀などは一番シンプルな製法で木と漆の性能を最大限生かした器の一つです。
漆の美しさ
木に漆を染み込ませる素朴な製法から、さらに美しさや堅牢さを求めて発展しました。
土などの成分と漆などを混ぜて、硬い下地をして、漆を精製し、顔料などを混ぜ、表面が美しくなるよう塗装の技術も開発されてきました。
漆塗りの塗面の厚さは塗装の中では非常に厚く、その厚みがしっとりとした肌触りと、奥深い光沢を出します。
朱や黒に仕上げた漆塗りは世界的に見ても、とても美しい塗装です。
蒔絵や沈金の加飾
漆の世界は加飾など美術的な製法も発展してきました。
特に金や銀、貝を使用した蒔絵や沈金は漆器を代表する加飾の技術です。
漆の堅牢さと金や銀など錆びたりしない素材との組み合わせは、永くその美しさを保ちます。
特に平安時代にはその技術はほぼ確立され、今でも正倉院宝物には多くの漆を使った美術品が保管をされています。
現代の素材
以前には漆器は高価なものでしたが、明治以降一般の庶民にも広く使われるようになりました。
生活水準も向上し、特に昭和の高度成長期以降には生活家電の普及や科学技術の発展によって、プラスチックなどの大量生産できる素材や化学塗料も発展してきました。
漆器の世界でも、今のライフスタイルの変化に合わせて、より使い易く、購入し易い価格を求められるようになり、新しい素材も開発されてきました。
漆器の物作りの技術を元に、現在でも食器洗浄機対応の素材や塗料を使用し、新しい漆器の世界を広げています。