そんな彼は270年続く造り手の家系でもあり,自身でも畑を持ちワイン造りをしている。ワイン愛好家なら誰もが思い焦がれるブルゴーニュのシャルドネとピノ・ノワール。この2つの品種にとりわけ強い愛着を持つ彼は,なんと偉大なブルゴーニュ・ワインを凌駕するワインを造る挑戦を続けている。彼の住むシャルセンヌ村のあるフランシュ=コンテ地方は,AOCに規定されている地方ではないため,造られるワインはAOCを名乗ることができない。このため,ワインはヴァン・ド・ペイ・ド・フランシュ=コンテ/Vin de Pays de Franche-Comteとして販売される。日本では無名のブドウ栽培地で,しかもヴァン・ド・ペイであるにもかかわらず,ギョームのワインは評論家たちに驚くほど高い評価を受けている。しかし,それも当然と言えよう。なぜなら,彼は自身のドメーヌにも超一流のドメーヌに提供するものと同じ世界最高品質の苗木と台木を使い,そして,最高の造り手たちとの長年にわたる深い親交と協力関係で培ったこれまた世界最高のノウハウを用いて,最上のテロワールで最高のブドウを栽培しているからである。例えば,世界最高の造り手たちに提供される苗木は,出荷される前に必ずギョームのドメーヌのなかで様々なテストを受けてから出荷される。ギョームの畑には,既述の超一流の畑で栽培されることになるシャルドネとピノ・ノワールの母樹が存在するからだ。つまり,将来,ラフォンのムルソーやルフレーヴのピュリニィ・モンラッシェ,ルロワのシャンベルタンやルーミエのミュジニィ,あるいはクリュッグのクロ・デュ・メニルやサロン,ロマネ・コンティ,ラ・ターシュなどを生み出すことになるブドウ樹はすべて,このフランシュ=コンテ地方にあるギョーム家に由来しているのである。
【中世から名を馳せたブルゴーニュのテロワールに匹敵する伝説の丘】
ギョームの住むシャルセンヌ村には,中世のブルゴーニュ公国の時代(879-1477)からブルゴーニュに匹敵するテロワールとして名声を馳せていた伝説の丘がある。それが,ジィ丘陵/Plateau de Gyと呼ばれる丘。ブルゴーニュと同様の最上の石灰質のテロワールが広がるその丘はソーヌ渓谷を見下ろす第一級の場所に位置するため,周囲の平地よりも温暖で,ブドウが格段に早く熟成するという絶好のミクロクリマを享受している。ギョームはこの丘の南と南西に面した標高300メートルの斜面でシャルドネとピノ・ノワールを栽培している。
現在のワイン地図において,ジィ丘陵はもちろんフランシュ=コンテ地方も,ワイン栽培地区としてはまったく考慮されていない。しかし,たとえワイン地図に記載されていなくとも,このジィ丘陵は,古くからフランスのワイン専門家であれば知る人ぞ知る,コート・ドール(=黄金の丘)と並ぶ伝説の丘なのである。