銀河系を人々が行き交う遠い未来。二つの種族の間で絶滅の危機に瀕している人類。命を狙われている人間の王子が、辺境に暮らす一人の少女の前に現れ、宇宙全体における人類の存亡を賭けた物語が始まる、という内容。 最近じゃとんとお目にかけなくなってしまった、スペースオペラ風にスケールの大きなSFに、少年と少女の恋と冒険がある、という具合。背景設定にもかなり凝っているようで、一種のファンタジーとして見ても読み応えはなかなか。しかしSFジュブナイルのようでありながらも、本質は健気でかわいいヒロインの、一生懸命な恋の話として楽しめる作品。ヒロインであるミニィは、辺鄙な惑星に住むただ一人の人間として、露骨な差別にもめげず労働者として暮らしており。一人の家に帰り一人で家事をして、両親の残してくれたホログラムの物語を見るのがなによりの楽しみで、いつか物語のような王子様と出会うことを夢見ておりまして。このへんがもう、健気すぎてじんわりと来るのだ。しかもこの世界じゃ人類そのものが絶滅危惧種なだけに、あまりにも未来の無い境遇が泣けてきます。でもそんなのどこふく風、というくらいに明るくたくましい彼女の姿がまたいいんだなぁ。で、そんなヒロインのもとに、命を狙われている本物の王子がやってくるわけですな。王子と王子の護衛。王子を狙う物。そして王子に恋をする者。彼らが交錯ドラマを展開しつつ、宇宙全体を揺るがすような事態が背景にあり、人類と他の種族との関わりについても秘密があり、そしてヒロイン自体にも何か重要な謎が隠されておりまして。壮大な物語と、少女の恋の物語とがバランスよくミックスされております。けっこうシリアスなアクションロマンなのかなぁと思ったら、ヒロインの良さにやられる感じ。
(筒口)