私が幼い頃、ある日、三代目である祖父が小さい石臼で小麦を挽いてうどんを打ってくれました。
そしてつゆではなく塩をひとつまみふりかけて食べさせてくれました。
口の中に小麦の香りが広がってとてもおいしかった記憶があります。
栄養が豊富で最も小麦と向き合える食べ方だと言っていましたが、当時は良くわからず、“じいちゃんが作ってくれた黒っぽいうどん”と認識していました。
後に、祖父が作ってくれたうどんの小麦粉は「全粒粉」「ひきぐるみ」と呼ぶと知りました。
最近では一般的にも使われるようになり、耳にすることもあるかと思います。
ビタミン・ミネラル・食物繊維等の栄養が豊富で、香りもうまみもたっぷりと詰まった小麦粉です。
製粉技術の発達していない時代にはこのような小麦粉で作ったうどんが一般的でしたので、“うどんの原点”とも言える麺です。
お客様の健康志向の高まりと共に、おいしくて健康に良い麺を提供できないかと考えたとき、何の迷いもなく祖父が作ってくれた全粒粉の麺を作ることに決めました。
全粒粉の麺を作ることは即決したのですが、完成までは試行錯誤の繰り返しでした。
“昔のうどん”をただ再現するのでは滑らかさが劣ります。全粒粉はタンパク質も多いため硬い食感になってしまうのです。
健康食や復刻版がコンセプトの商品であればそれで良いのかもしれませんが、いくら健康に良いから・なつかしい味だからと言っても
おいしくなければ受け入れていただけませんし、おいしいものを作ってお客様に喜んでいただくのが作り手の誇りです。
様々な品種、様々な配合を試しながらもなかなか納得できる麺にならなかったのですが、答えは意外にも身近なところに在りました。
群馬県産の“つるぴかり”という品種です。つるぴかりはその小麦粉だけでは麺にしたときに硬さが出ないため、
饅頭等の製菓用に使われることが多い品種です。そのつるぴかりをブレンドすることにより滑らかさを得ました。
また、花山漆黒用の小麦粉は石臼挽きで製粉いたしました。国産小麦のみを使用。もちろん無添加です。
製造工程では、低温でじっくりと熟成させながら乾燥させ、小麦の香りとうまみを逃さずに麺に閉じ込めました。
噛むほどに力強い小麦の味を楽しんでいただけます。
昔ながらの技と、新しい技。昔ながらの味と、新しい味。こだわりとは?伝統とは?
――それらと向き合い、小麦と向き合い、麺と向き合って作り上げた品がこの花山漆黒、渾身の自信作です。